今更ながらに夏の持久系競技種目のトレーニング法を教えます

猛暑が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

この季節は、持久系にとってはキツイですね。

しかし、来るべきマラソン大会シーズンに向けてランニング専門各誌共に、

 

夏の走り込みは重要!

暑い夏こそ走り込み!

 

そういった特集を組まれることが多いです(大抵7月号:6月に発売される)。

 

このクソ暑い時期に、走り込みって自殺行為ではないか? と思いつつ、しかしながら、自分が現役の頃や、箱根駅伝(特に予選会)に出場する大学の特集などを見ると、走り込みしてますよね?

なぜ彼らは耐えられるのでしょうか?

 

今回は、回避法を考えました。

しかし、あくまでリスクを下げる方法であり、完全に回避、予防を保証するものではありません。

熱中症を回避するための基本的な考え方は2つあります。

  1. 放熱を促す
  2. 熱産生を抑える

この2つです。

「1:放熱を促す」 のは、大体紹介されていますね。

通気性、放湿性の高い速乾性のウエアを着る。最近では、紫外線カットにとどまらず、赤外線カットのウエアもあるとか?

汗がかけるように水分補給、電解質補給。

あとは、熱中症になってしまった後によく言われる、大動脈の冷却等。

これらはもはや常識ですので、割愛。

 

トレーニングを考える上では、もうひとつの

「2:熱産生を抑える」

ことが重要になります。

 

基本的に、無気的エネルギー供給機構の関与が高まると熱は多く生み出される傾向にあります。

経験的に、ウエイト等に代表される筋トレでは、数回の反復回数にもかかわらず、動員している筋肉では大量に熱を発生します。しかし、他の部位ではあまり発生していないことから無気的エネルギー供給機構がいかに熱を産生しているかがわかります。

では、有気的エネルギー供給機構が熱を生み出さないのか?というと、勿論、発生します。

ただ、機構自体がエネルギー産生・供給スピードが遅いので、言わば「とろ火」状態なので、無気的エネルギー供給機構の「大火力」に比べたら出ない方です。

 

そんなこと言ったって、有気的領域だって、レース中に限らず、やや速めジョギング中はめちゃくちゃ暑いじゃないか!

 

そらそうでしょう。

LT(AT)を超えたら無気的エネルギー供給機構の関与率が高まる上に、レースペースはOBLA(FTP)であり、無気的エネルギー供給機構がメインになるギリギリ手前なので、逆に言えば、有気が全開、無気も中程度の状況なので、相当に熱は産生されています。

 

ということからも、レースを意識してレースペースに近い領域で走るのは案外熱を産生しているので、結構リスクが高いのです。

 

じゃあ、どうすればいいのか?

解決方法は2つあります。

  1. 強度を極端に落として長時間走る
  2. 強度を極端に上げて短時間で済ます

 

1:強度を極端に落として長時間走る場合には、持久系のメインである遅筋線維の動員のみでトレーニングする領域、即ちLT(AT)以下~近辺でトレーニングをすることです。

回復走等の領域でしょうかね。長時間行けばいわゆるLSDです。

熱産生を抑えながら、毛細血管の拡張と遅筋線維の強化につながり、結果として遅いのに持久力を高めることにつながります。

時期的にも、シーズンインしてからスピード練習にシフトしてベースの持久系が落ちてきた頃ですので、基礎を補填するのにもつながります。

 

 

2:強度を極端に上げて短時間で済ます場合には、無気的エネルギー供給機構をふんだんに使い、その強い刺激で持久力や筋力を上げてしまおうというアプローチです。レースペース以上の強度にする必要があるので、ハーフ~フルマラソンが目標であれば、10km~5kmのレースペースよりも速く、もっと言えばOBLA以上での強度です。

その強度で、1回で済ませるペース走であれば、20分程度しか走れません。

 

インターバルトレーニングであれば、反復も考えると、3~5分持つ程度。これは今月の某雑誌の特集である「1kmラン」に相当する強度(OBLA~VO2MAX)であると思います。

この強度であれば、反復回数を考えると、セッション時間が合わせても40分くらいで終わる割に、効果は一発20分よりも程々高いです。

 

他には、もっと短くて強度を上げてもいいと思います。極端な話、VO2MAX以上の強度(無気的エネルギー供給機構メイン)になる60秒以内全力ダッシュとかを十分な休息を挟んで数本でも、酸素借が多ければ、酸素負債状態のレストでだいぶ有気的エネルギー供給機構には負荷が掛かります。

稼働時間は短いので、日向で全力で走って熱が出ても、風通しのよい日陰で休んでいる間に放熱できるので、熱害のリスクは低くなります。

酸素借が多いので、レストをジョグ繋ぎなんかできない強度ですので、素直に休んでください。

 

これらのことから、無駄に稼働することなく、効果の高いトレーニングとすることができますが、どちらかというと強度を上げるのは素地のある玄人向けで、初心者向けではありません。

熱害のリスクはやや低くなりますが、ケガやオールアウト等のリスクが高まるのが理由です。

また、短時間で済ますことを考えがちですが、それもまた違って、重視することは、「短時間で高出力を出すこと」です。

目的の強度までしっかり出せなければ意味がないので、レストを多くしても構いませんし、回数も多く反復しなければいけないわけでもありません。

数回以内で終わってもいいので、体調等を考慮して物足りない程度の安全係数を掛けても構わないと思います。

(だって、体が耐えられないから熱中症になるわけで・・・)

 

とはいえ、最近の厚さはちょっとひどすぎます。

安全第一といえど、今の酷暑では安全な日が無いので、トレーニングを避けるだけになってしまいます。

いくら涼しい時間帯にトレーニングするにしても、この時期は気温が低くとも湿度が高いため、結局、熱中症リスクもそんなに低くないと言えます。

直射日光が当たらない為、その分熱を受けにくいということは考えられますが、逆に放熱が難しいという側面も認識しなければなりません。

逆に、風があれば程々冷却もされるので、風があるのはいいかもしれません。

天候不順の際には山や峠に逃げるというのはやっぱりいい選択かもしれません。

 

 

トレーニング前はできるだけ予防に努め、トレーニング中は強度と量と体調に気を付けて、トレーニング後はできるだけ回復に努めることが大事です。

夏のエネルギー問題 にも書きましたが、筋グリコーゲンが水分を引き寄せるので、積極的に糖分を取っていないと、いくら水を飲んでも保水しておけません。

これはスポーツドリンクでどうにかなるレベルではありません。

しっかりとご飯を食べる、補食を取るのは勿論、トレーニングと合わせて糖を消費しないこと、熱を発生させない、熱にさらされる時間を短くすることも考えていく必要があります。

 

これは、自転車もスイムもトライアスロンも同じです。

自転車やスイムは空冷、水冷でマシな部分はありますが・・・

 

夏の持久系種目のトレーニングが一般に向かない理由は、

「やるのはいいけど、反動が大きいから」

 

高校野球でも全力を尽くして熱中症で倒れたのが美談になりますが、美談でもなんでもない気がします。

もっとストレートに言えば、

「熱中症で倒れた時点で全力を出し切れてないし、管理も甘い。つまりお前は勝つために何も考えてない上に対策もしてない、スポーツも頭も弱い人間だ!」

と揶揄されてもおかしくはないのです。

仕事で重要な案件の締切に対して、「過労で倒れるまでよく全力で対応した!全力を尽くしたからおまえは仕事ができる!よくやった!」と、取引先はならないでしょう・・・

 

思った以上にスポーツトレーニングは、計画的、戦略的な要素が強く、頭を使って先読みして、対策を取っておかないといけません。

反動を見越して実施する、回復を見越してトレーニングを計画する、結果を受けて修正する・・・

夏のトレーニングは、リスクマネジメント、リスクヘッジが重要です。

目先の1しかない利益(効果)を優先獲得して、長期的に10の損失(能力低下)を出してはいけないのです。

逆に、目先を1の損失に抑えて、長期的に10の利益を出さなければなりません。

 

できる経営者がトライアスロンにハマるのは、経営的観点をトレーニングに流用しているからでしょう。

そういう考えを持ってトライアスロンをしていけばあなたもできる経営者に!?

 

暑さによる体調不良にはくれぐれもご注意を!

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